一流のサービス
うちの近所の図書館。
小さな町の、小さな図書館です。
蔵書も多くはないし、新しくもないし、特別なことはなにもありません。
でも、素晴らしいのは司書さんの対応。
貸出カウンターに近づく気配に、すぐさまパソコン画面から向き直って手続きしてくれます。
席を離れていても作業の手を止め、素早く戻って出迎えてくれます。
返却時にも、なんの手続きもないのに、正面に歩み寄って直接受け取ってくれます。
文字にしてみたら、なんの変哲もありません。
どこの図書館でも当たり前の、通常業務かもしれません。
でもその速さが、素晴らしいのです。
気配に気づく速さ。切り替えの速さ。
当然、皆さん仕事中ですから、色々と作業をしています。
そこに突然現れる利用者。
普通だったら、気づいてから手を止めるまで、向き直るまで、多少のタイムラグはあるはずです。世間一般で、黙認されるくらいの、一拍の間。
私も他ではそのように扱われてきたし、自分もそれくらいの間は許されると思ってきました。
集中して作業をしているとき、ふいに中断されると、元に戻るときに時間がかかります。
終わったところを探す手間が増えます。
だからなるべく、手を放す前に、ここまでやった、という自分自身の確認の一瞬が、大切だったりするのです。
ただそれは、こちらの作業効率の話。
もし中断者が、お客様だったら、上司だったら、優先すべきはどちらでしょうか。
わかっていながら、私も散々ズルしてきました。
ほんの一瞬。
相手に気付かれないようにしながら、自分の都合を挟んできました。
それを、こちらの図書館の司書さんは、揃いも揃って気持ちよく、迷う間もなく利用者に対応してくれます。
誰が、ということもありません。
誰もが、すぐに反応するのです。
そうなると、反射神経の問題、個人の資質だけではないようです。
仕事についての意識の持ち方、それから、それを共有できる職場の風土。
作業に集中していればいるほど反応が遅くなるということもあるでしょうが、それもたぶん言い訳。
最優先がお客様であるなら、集中力もそれに合わせて調整するのがプロなんだろうと思います。
もし私が言ったみたいに、作業に戻るのに時間のロスが出たとしても、それはロスではなく、必要な時間として振り分けるべきものなのかもしれません。
これくらいいいだろう、とか、どうせバレない、と思っていた自分が恥ずかしくなります。
こんな些細なこと、一瞬のこと、目に見えないことで、印象が左右される。
その差が、感動を生む。
分かっていながら、やっていないこと。
一流とそれ以外との差は、こういうことなのかもしれないと思いました。