電車の中で
私は吊革につかまって立っていました。
隣にポロシャツのがっしりした若いおじさん。
その間に、すっと手が伸びて、私とポロシャツおじさんの間の吊革につかまる人が。
こちらは太鼓腹のすっかりおじさん。
体は入り切りませんから、ちょうど私の左背後に重なる感じになりました。
まあ、混んでいるので仕方がないです。
ちょっと暑苦しいかな。なんて思っていたら、どうやら酔っているらしく、立ったまま寝始めてしまいました!
ゆらゆらする太鼓腹のおじさん。
私の背後で予測不可能な動き・・・。
ゲーーは、なさそう、とはいってもわからないし。突然くる!?
そうしたら、絶対逃げよう。他の人の膝に乗ってもいいから、そこは思い切り逃げよう。
つるっと手が滑って、覆いかぶさってきたらどうしよう。それもありうるから、ガラスに映る姿で、かわすタイミングも計りつつ。
いや、やっぱりここは脱出するべきか。
あ、いま太鼓腹が当たりました!
これって、私が「やめてください!!」とか叫んだら、このおじさんは捕まっちゃうのかな。どっちが被害者かわかんなくなっちゃうな。
こんな無防備でいいのかな。これはおじさんに教えてあげたほうがいいのかな?でも、酔っ払いになんて言う?
あなた、痴漢に間違えられたら大変ですよ。とか。女性に言われるのってどうなんだろ・・・。
とか、ごちゃごちゃ考えていました。何しろ、混んだ車内。することもないので。
すると、酔っ払いおじさんの向こうのポロシャツおじさんが、酔っ払いおじさんにトントンしました。
「はて?」と気づく酔っ払い。
「邪魔になってますから、こっちに立ってください」
と、自分と酔っ払いおじさんの立ち位置交換を提案。
すると酔っ払いも素直に移動。
私の隣に、ポロシャツおじさん。その向こうに酔っ払いおじさんの順番になりました。
そして私に「大丈夫ですか?」とひとこと。
なんてジェントル!!
私もようやくまっすぐ立てるようになりました。
酔っ払いおじさんも、今度はしっかり吊革につかまり、安定して立ち寝に入った模様。
いつもの帰りの電車の様相になりました。
私もそれほど切羽詰って眉間にしわ、とか肘鉄で応酬、とかはしていませんでしたが、その程度でも「嫌な思いをしているだろうな」と見ず知らずの他人を気遣い、行動してくれる男性。
『我関せず』で殺伐としたニュースも多い中、世の中にはまだまだこんなに素晴らしいことがあるんだ!と感動しました。
今日はボソッとお礼を言うことしかできませんでしたが、このご恩はきっとどこかで誰かにお返ししますからね!
こうやって、善い行いをすこしづつ広めていきましょうね!
ありがとう。ポロシャツおじさん。
あなたのおかげで、世の中がきっともっとよくなります。
私も頑張ります。